波風は“個人の性格”ではなく“構造の問題”
あなた自身も、「そんなこと」と言われて飲み込んできた違和感があったはず。 でも、その“そんなこと”こそ、構造の歪みを知らせる大事なサインなんですよ。
昔、事務・サポート・営業が同じフロアで働くオフィスがありました。
そこでは、所内の掃除を“女性社員10人だけ”が順番で担当するという、古い慣習が残っていました。
営業の女性は、週の半分が出張。
オフィスにいる時間は限られ、掃除当番の順番を意識することもほとんどありません。
ある日、女性だけが集められたミーティングで、他部署の女性からこう言われます。
「ずるい。女性主任も、営業部のあなたも、飛ばした当番をいる時にやるべきだ」
営業の女性は驚きました。
不在の間に当番が回っていたとしても、
「いなかったのだから飛ばされるのは自然なこと」
そう思っていたからです。
まして、「女性主任も掃除をすべきだ」という意見には、さらに強い違和感がありました。
しかし、その場には彼女の価値観に賛同する人も、状況を整理してくれる人もいませんでした。
上司に相談しても返ってきたのは、「そんなの当事者同士で決めてほしい」という言葉だけ。
その結果、話し合いは感情を優先され多数決や同調圧力で決まり、仕事の評価や業務分担といった本質は無視されてしまいます。
これは女性蔑視であり、女性のキャリアの向上を阻む構造そのものです。
この出来事をきっかけに、彼女は静かに決心しました。
「近い将来、この組織を出よう」
長い間、彼女の中には「そんなこと」と片づけてしまいたい気持ちと、
「でも、何かがおかしい」という違和感が同居していました。
これは単なる掃除当番の話ではありません。
時短の女性社員のフォローも同じことが起きていないでしょうか。
職場に潜む“構造の歪み”が生んだ典型的な摩擦だったのです。
1.「女性だけが掃除する」という古い慣習がつくる不公平 |
掃除を女性だけが担当していた時点で、役割分担はすでに歪んでいました。
本来、掃除は性別ではなく、フロアを使う全員の責任です。
しかし、古い慣習が残る職場では、
「女性がやるもの」
という無意識の前提が根強く残ります。
この歪みが、「私ばかり負担している」という不満を生み、摩擦の火種になります。
2. “見える負担”と“見えない負担”の差が誤解を生む |
事務やサポートはオフィスに常駐しているため、負担が“見える”仕事です。
一方、営業は外で働く時間が長く、その負担は“見えない”。
見えない負担は評価されにくく、「楽している」と誤解されやすい。
営業の女性は外で成果を出しているのに、オフィスにいない時間は“免除されている”ように見えてしまう。
これは、働き方の違いを理解しないまま、1の不公平さによる負の感情が優先される
3. ルールが曖昧だと、解釈の違いが対立になる |
- 不在時の当番はどう扱うのか
- 営業はローテに入るのか
- 在席時だけやればいいのか
これらが曖昧なまま運用されていたため、“解釈の違い”がそのまま対立になりました。
営業女性の考えは合理的です。「いなかった分まで負担する必要はない」
働き方の違いを踏まえれば自然な感覚です。
しかし、ルールが曖昧な職場では、合理性よりも“感情”が先に立ってしまうのです。
4. 本当の問題は、個人ではなく“構造”にある |
この出来事は、
営業女性がずるいわけでも、事務女性が意地悪なわけでもありません。
問題は、
- 女性だけが掃除する文化
- 働き方の違いを考慮しないルール
- 役割の偏りを放置した組織
という“構造”にあります。
構造が歪んでいると、本来ぶつかる必要のない人同士がぶつかってしまう。
これは、どの職場でも起こり得ることです。
5. 公平とは「同じ負担」ではなく「状況に応じた適切な負担」 |
公平とは、全員が同じことをすることではありません。
- 常駐者には常駐者の役割
- 外勤者には外勤者の役割
- 働き方が違うのだから、負担の形も違って当然です。
本来あるべきルールは、「営業は在席時のみ掃除を担当する」という柔軟なものだったはずです。
働き方の違いを無視して“同じ負担”を求める方が、不公平なのです。
“波風”は、誰かのSOS
あの日の摩擦は、個人の問題ではなく、構造の歪みが生んだ誤解でした。
職場の不公平は、いつも静かに、そして確実に、“ルールの曖昧さ”から生まれます。
そして、突然のクレームや「波風」は、居場所がない人のSOSであることも多いのです。
「そんなこと」と思えることでも、業務である以上、本来は会社が決めるべきこと。
個人同士が感情でぶつかる前に、組織が構造を整える必要があります。
そして、当事者同士で決めたことであっても、最終的な判断は会社に委ねることが大切だと私は思います。
このコラムが、同じような違和感を抱えた誰かの背中をそっと押し、
「問題はあなたではなく、構造にある」と気づくきっかけになれば嬉しいです。
あなたにも、「そんなこと」と感じながら口に出せないこと、ありませんか。